「カテーテル治療は、ステントグラフト内挿術(TEVAR)という人工血管を入れる治療です。足の付け根を4~5センチ切開して、そこからカテーテルを入れ、動脈の中を通って、患部に到達します。そこでカテーテルの中に折りたたんで入れてあるステントグラフトという人工血管を開いて、血管の内壁にフィットさせて補強し、破裂を防ぎます」(同)
開胸、開腹手術と違い、患者の負担が少ない治療として注目されてきました。2008年に保険適用の治療となり、全国の病院で治療が増えています。
ステントグラフトは内科治療ですが、心臓血管外科、血管外科、放射線科などでおこなっているケースがほとんどです。
ただし、ステントグラフト内挿術は、胸部の弓部のような曲がった部分は技術的に難しいといわれています。胸部の場合、約5年で20%程度が再治療になるという報告もあり、医師とよく相談して慎重に治療を選択するべきです。
「大動脈解離は、発症する部位で治療が異なります。おなか側へ下に裂けるB型解離では、手術はしないで、血圧を下げる降圧剤を投与して安静にする保存治療かステントグラフトによる治療をおこないます。B型の8~9割はこの方法をとります」(同)
集中治療室で数日間安静状態を保ち、経過を見ながら、血流の状態をCTで評価します。2週間から1カ月の入院が必要です。
B型解離は、解離したところに、後で大動脈瘤ができる確率が30~40%あり、その場合はステントグラフト内挿術で追加治療をおこなうこともあります。また、解離が起きた時点で、腸管や足に血液が行き届かない状態になっている場合があり、緊急手術によって血流を確保することもあります。
■外科治療 瘤には人工血管置換術 解離には一刻も早い手術を
大動脈瘤の外科治療は「人工血管置換術」という手術です。瘤ができた部位の血管を、人工血管に取り換える術式です。将来的に入れ替えがなくても済むように、耐久性のあるポリエステルなどの化学繊維製の人工血管を使用します。