■代表選手は「手本であれ」
では、3年半の代表監督を経験して小久保氏が得たものは何なのか。その問いかけに、小久保氏は「ボク自身というよりも選手がどう感じてくれたか」が大事だと語った。
「日本球界における代表選手の役割や使命、そして責任が非常に大きいものだということを、3年半に渡って招集してきた選手たちは感じてくれたと思います。やはり、自分たちが球界をひっぱらないといけないという思いが出たことが一番だと思っています」
また、初めての常設監督として長期に渡って選手たち招集し続けたことで、選手同士の相性や性格が把握できたのは大きなメリットだったという。さらに、ホークスや巨人でのキャプテン経験などを通して生まれた『精神論野球』を、3年半の間に招集した選手たちにしっかりと伝えていくこともできた。特に口うるさく選手に伝えたのは「ツバを吐くな」「帽子はきちんとかぶれ」という2つの事柄だったという。
「アマチュアのトップの選手を含め、子ども達からも見られているわけですから、手本にならないといけない。ボクはもう代表監督ではありませんが、これから先も球界の先輩として言い続けていかなければいけないと思っています。ボク自身も(ホークスで)24歳でレギュラーを取った時から『手本になれ』と言われ続けてきましたし、それはやはり当時の監督だった王(貞治)さんの影響が大きいですね」
今回、侍ジャパン監督しての3年半の軌跡を、赤裸々な心情とともにまとめあげた一冊『開き直る権利』について、小久保氏は「WBCを見てくれた方にぜひ読んでいただければ」という。しかし、小久保氏がこの一冊を通して最も伝えたかったことは、野球への関心のあるなしに関わらず共鳴できる部分があるはずだ。
「過去に起こった事実は変えることはできません。でも、その過去の出来事を自分がどうとらえるのかによって、人生は変わってくると思います」
小久保氏は、来シーズンもNHKの野球解説者として12球団を見守っていくという。プロ野球ファンとして気になるのは、いずれどこかの球団で監督としてユニフォームに袖を通すことがあるのかどうかだ。小久保氏はちょっと微笑みながら、「ずっとそういう人材であり続けたいと思っています」とだけ答えた。