各都道府県の人口あたりの医師数と県民1人あたりの医療費の関係/前回のコラム『首都圏の医師不足、厚労省が信じた「医師増で医療費が増える論」は暴論だった?』はこちら
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 東京を中心に首都圏には多くの医学部があるにもかかわらず、医師不足が続いている。そのような中、現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、「医師を増やさない理由」について言及している。

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 前回のコラムで、「医師が増えると医療費が増える」という医師誘発需要説について解説しました。

 ところが現在も、医療経済学者以外の医療関係者、厚労官僚の中には「医師が増えると医療費が増える」と信じている人が多いようです。

 もし、国民が「医者を増やしても医療費の増加は僅かである」と考えれば、医師不足の日本で大学医学部の定員を増やす合意を得ることは容易です。

 現にアメリカでは、財政赤字にもかかわらず、医師数を大胆に増やそうとしています。

 狭義では、医師誘発需要説の妥当性は状況次第です。医師が足りない状況では、医師を増やせば医療費は増えます。医師数が一定レベルを超えれば、医師を増やしても、医療費は頭打ちになります。問題は、現在の我が国がどのような状況にあるかです。

 我が国の医療体制は地域によって大きく異なります。図のように、西日本では医師数と無関係に県民1人あたりの医療費はほぼ一定であるのに対し、医師数が少ない東日本で両者は相関しています。例外は東京、沖縄、京都です。県(都・府)民の平均年齢が若いことが影響しているのでしょう。

 つまり、東日本では十分な医療を受けておらず、医師を増員する必要があると考えられます。不足している東日本の医師を増やせば、医療費は増えます。強面の財務省と対峙しなければならなくなります。厚労省にとって頭の痛い問題です。

 日本医師会や医学部長たちにとっても、商売敵が増える、うれしくない話です。日本医師会の幹部の中には、医学部新設の是非を議論するために設置された文科省の検討会で「(数が増えて儲からなくなった)歯科医のようになりたくない」と公言して憚らない人もいます。また、何人かの東日本の医学部長たちは「医師を増やせば質が下がる」という主張を繰り返しています。

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