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首都圏の医師不足、厚労省が信じた「医師増で医療費が増える論」は暴論だった?

連載「メディカルインサイト」

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上昌広dot.#朝日新聞出版の本#病院
医師を増やすと、医療費が増えるのか? (※写真はイメージ)

医師を増やすと、医療費が増えるのか? (※写真はイメージ)

 東京を中心に首都圏には多くの医学部があるにもかかわらず、医師不足が続いている。そのような中、現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、医学部の定員を増やすことに尽力した人物について言及している。

*  *  *
 厚生労働省は、なぜ「医師不足は緩和する」と強硬に主張するのでしょうか。

 それは、厚労省が医療費の抑制を最大の使命とし、「医師が増えると医療費が増える」と考えているからです。

 この「医師が増えると医療費が増える」という学説を、「医師誘発需要説」と言います。

 2015年9月13日、日本経済新聞朝刊は一面トップで「医学部の定員削減 政府検討 医療費膨張防ぐ」という記事を掲載しました。

 医師誘発需要説は、1983年に米国の医療経済研究者である Rossiter たちのグループによって提唱されたものです。彼らは、米国での実証研究の結果に基づき、医師が増えると医療費が増加することを示しました。

 ただ、この研究では医師数が10%増加しても、外来受診の頻度の上昇はわずか0.6%でした。医師誘発需要説は科学的には妥当であるものの、社会的に与える影響については疑問の余地がありましたが、多くの医療関係者の間では「医師を増やすと、医療費が増える」というコンセンサスができあがりました。「医師の売り上げは、一人あたり1億円はあるだろうから、人数が増えれば、それだけ医療費が増えるだろう」という医師や官僚の感覚ともマッチしたようです。

 1983年には、吉村仁厚生省保険局長(後の事務次官)が論文や講演・国会答弁などで「医療費亡国論」を強硬に主張しました。

 吉村氏は、「ミスター官僚」「厚生省の歴史を変えた男」と呼ばれる人物です。「医療費の現状を正すためには、私は鬼にも蛇にもなる」と言い切り、医師優遇税制改革や、無料だったサラリーマンの医療費一割自己負担などの制度改正を行い、医療費の膨張に歯止めをかけようとしました。


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