◆世界での地位を落とし続ける日本
日本の製造業をどんどんダメにしている経産省が主導するアベノミクスの成長戦略で、日本経済はますますその世界における地位を落とし続けるだろう。日本の経済規模は、世界3位だが、つい何年か前に中国に追い越されたと思っていたら、今や日本のGDPは中国の44%(2016年)。半分にも満たない。一人当たりGDPで見てもなんと世界22位(16年)。
もちろん、今はダメでも将来は復活すると信じたい。そこで、日本の将来の経済レベルを推し量るために教育レベルを見てみると驚くような事態になっている。日本の教育レベルは世界一なんて思っている人も多いようだが、日本の大学の世界ランキングは下がる一方。今や世界での順位は問題外。アジアだけに限定すれば、やっとベスト10に名前が見えるという状況だ。それでも、東大がやっと7位。ベスト20位までにはこのほかに京大が入るだけだ。日本より上位には、シンガポール、中国、香港の大学がずらりと並ぶ。韓国も日本より数多くの大学をランクインさせている。これが日本の文科省の教育行政の成果なのだ。
こうした危機に残念ながら、与党はもとより、野党も全く気付いていないようだ。選挙中にも、EV競争の激化を報じるニュースが連日報じられたが、これらを取り上げた選挙演説はついに聞かれなかった。経済音痴の程度では、安倍総理も野党代表もいい勝負というところだろうか。
◆庶民の生活破たんは戦争や国家経済破たんの前に訪れる
この選挙で何となくスルーされてしまった二つの争点。繰り返しこのコラムでも指摘しているとおり、日本の政治の対立軸は、「戦争をするのか絶対に戦争をしないのか」、経済を立て直すために「既得権と戦う改革をするのかしないのか」の二つだ。
しかし、そのことが明確に選挙の争点にならないこと事態が、今日の日本の危機を如実に物語る。危機に気づかなければ、対策の取りようがない。今後は、国民にとっての「受難の時代」が顕在化してくるだろう。
それを整理すれば、まず直近では、安倍政権の安保政策の加速化により、本当に日本が北朝鮮との戦争に巻き込まれるのかどうかが最大の危機状況だ。憲法改正がどうとかというよりはるかに差し迫っている。
仮にそうならなかったとしても、中期的には日本の産業が競争力を失って、国民の生活レベルは途上国並みに下がっていくことになる可能性が高い。もちろん最大の被害者は庶民である。
また、戦争にならなくても、日米同盟強化と軍事優先路線のために、国防予算がどんどん増大し、経済が停滞する中で予算に大きな負担が強いられることになる。その時は、経済が破たんしなくても、社会保障などの予算削減か大幅増税が不可避となり、庶民の生活は国家よりも早く「破たん」する。
どういう道筋をたどったとしても、国民にとっては受難の時代だ。この泥沼から抜け出すには、次の選挙を待たなければならない。
希望の党が誕生して一筋の明かりを見た市民。しかし、希望が失望に変わり、今は絶望という状況だが、あきらめてはいけない。希望と立憲民主に分かれた民進党出身議員の中に、まだ、「改革はするが戦争はしない」という確たる信念を持った議員が何人かいる。
今後、希望の党は分裂必至だろう。立憲民主や無所属で戦った議員と残っている民進党との合従連衡もすぐに始まる。年末にかけて、野党再々編が起きて、「改革はするが戦争はしない」という明確な旗印を掲げる政党が出て来ることを期待したい。(古賀茂明)