欧米メーカーも高級車で500キロメートル走行ができるモデルを続々発表している。テスラのモデル3でも350キロ超だ。ちなみに、トヨタはEVを発売できない状況だが、去年大騒ぎして出したプラグインハイブリッドのプリウスPHVの電気での走行距離はたったの60キロ程度。これだけでもトヨタがどれほど遅れているかがわかる。
中国政府もEVシフトを強力に進め、カリフォルニア州と同様の規制を導入する予定だ。現在もすでに中国はEV生産で断トツの世界一になっている。これは世界の常識だが、日本ではあまり知られていない。環境政策の一環である排ガス対策として進めるというのが建前だが、明らかに、この規制によって、自国メーカーをEV生産で一気に世界トップに育成する産業政策としてこれを推進している。
一方の日本では、何と、新車販売の8割がエコカー減税の対象だ。その割合は昨年までは9割だった。来年も引き下げられるが、それでも7割。つまり、平均よりも排ガスをたくさん出す汚い車も「エコカー」としている。HVでさえエコカーと認めない海外の規制とは雲泥の差だ。そこには、中国並みの規制を入れると、潰れる自動車メーカーが出てきて、天下り先が減ることを経産省が怖れているというとんでもない事情もある。つまり、お友達に配慮する経済政策の図式は、モリカケ問題と全く同じだ。
唯一、EV戦線で首の皮一枚つながっていると思われた日産は、今月からEV「新型リーフ」を販売しているが、不正検査問題による販売停止などで急ブレーキがかかった。しかし、そもそも、日本では画期的と言われるこの「新型リーフ」でさえ、航続距離は米国基準なら240キロメートル。テスラのモデル3よりもはるかに短い。
欧州では、英仏が2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止すると発表。これを受けて、パリ市は30年までのガソリン・ディーゼル車の市内乗り入れ禁止検討を発表した。インドも30年までに全てEVに転換するとして、中国を猛追する意思を示している。
ひるがえって日本。アベノミクスでは、環境政策も殆ど目玉がなく、依然として実用化がはるか先の水素頼み。問題は、安倍政権だけではない。今回の選挙でも、どこの政党もこの問題を取り上げなかった。EVの世界では、日本だけが特異な世界を築いている。おそらく、このままでは、「ガラケー」ならぬ「ガラカー」という言葉がはやりそうな雲行きだ。