小池百合子氏率いる「希望の党」が政治報道の大半を占めている。細野豪志氏と若狭勝氏も直前まで知らされていなかったという小池流サプライズの手法はとどまるところを知らず、毎日目玉ニュースを提供している。
民進党・前原誠司代表の言葉も、細野氏や若狭氏の言葉もほとんど何の意味もない。発言が報道されるそばから小池氏に覆されるということが頻発している。
しかも、驚くべきことに小池氏自身の言葉も、日替わりでくるくる変わっているようで、何を信じていいのかわからない。神=小池のみぞ知るという状態だ。
しかし、実は、小池氏の発言や行動は全て緻密に計算されているようだ。
あまりに多くの要素があって、全体で議論しても混乱するだけなので、ここでは、「原発ゼロ」というテーマに絞って、小池氏の戦略を読み解いてみたい。「右旋回」でリベラル票が逃げ始める中、それをつなぎとめる切り札としての役割を担う小池氏の「原発ゼロ」とはどんなものか。
小池氏は、実はバリバリのタカ派である。核武装も選択肢として検討する余地があると発言したことでも知られると言えば、その程度がどれほどかは理解してもらえるだろう。しかし、自治体の選挙では、沖縄などを除き、外交や安全保障政策はテーマになりにくい。したがって、候補者が外交安保でタカ派か、ハト派かはあいまいなまま選挙が行われる。東京都も例外ではない。
小池氏と言えば、一般の都民には、グリーンカラーに身を包み、笑顔で「東京大改革」を叫ぶジャンヌ・ダルクというイメージが浸透している。これで東京都民の心をつかみ、都知事選で大勝、今夏の都議選でも都民ファーストの会をいきなり議会第1党に躍進させた。タカ派色が問題にされず、その結果、改革派の票を右から左まで幅広く集めることに成功したのだ。
では、小池氏の原発政策はどういうものなのか。原発立地地域でもないため、これまで、小池氏の立場は明確ではなかった。ただ、自民党時代に脱原発という発言をしたという話は聞いたことがないし、福島第一原発事故の数カ月後には、むしろ再稼働のためのロードマップを作れと主張していたのだから、かなりの「原発推進派」だと見てよいだろう。さらに前述した核武装論との関係でも、少なくとも、原発維持派と見なければ整合性が取れない。