小池氏は、こうした発言だけで、勝手に有権者が、小池氏は脱原発派だと勘違いするような演出もしている。それが、小泉純一郎元総理の「利用」だ。25日の会見後、小泉氏と会談し、その後、小泉氏が各所で原発ゼロは「早い方がいい」「小池氏にがんばれと言った」などと発言することで、いかにも小池氏が早期原発ゼロを目指しているかのような印象を与えている。もちろん、小池氏は早期にゼロなどとは一言も言っていない。
実は、小池氏は、この原発ゼロ発言と同時に、「憲法9条ばかり議論するのはおかしい。地方分権から議論したらどうか」という趣旨の発言をしている。
この二つの発言はいずれも、小池氏=タカ派というイメージを払拭し、リベラル系の人々の支持を得るために行われたものだということが想像できる。その時点では、まだ、民進党の吸収という話はまとまっていなかった。まとめるためには、枝野幸男氏らリベラル系の前議員の説得が必要だ。小池氏の「原発ゼロ」発言は、彼らが希望の党に入る大義名分として、「小池氏はそれほどタカ派ではない、安倍総理よりはましだ。原発ゼロも打ち出してくれたし、安倍政権打倒のためには組むしかない」という理屈を支持者たちに説明しやすくするための材料となった。つまり、誘い水効果を狙ったのだ。こうした作戦が功を奏したのか、28日の両院議員総会では、民進党候補者が希望の党に合流することが意外なほどすんなりと決まった。
ところが、小池氏の脱原発政策は、9月28日の解散後に民進党が事実上、希望の党に吸収されることが決まると、今度は、「30年ゼロに向けた工程表を作る」という発言に変化した。逆に言えば、「2030年まで」は動かすという案だ。もちろん、「2030年代」と言っていた民進党よりも10年前倒ししたということだから前進した感じは出ている。特に、原発に関心の高い人たちは、「30年代」を「30年」に変更しようとしたものの、連合の反対で失敗した蓮舫・民進党前代表のことを覚えているから、小池氏のこの発言でも評価する声がある。連合を説得したこともかなりのインパクトを持って受け取られた。