テクノロジーが進化することで、人間の仕事はなくなってしまう――そんな未来図が、異口同音に語られるようになっている。そのきっかけとなったのが、オックスフォード大学でAI(人工知能)研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授が発表した論文「雇用の未来」だ。この論文では、実に702種類の職業を対象に、「10年後にコンピューターに置き換えられる可能性」を算出してランキング化している。彼によれば、702の職業のうち約半数の47%がコンピューター化されるそうだ。
コンピューター化されると予想された主な仕事を見てみると、小売店のレジ係やホテルの受付、タクシードライバーなどが並んでいる。確かに最近ではセルフレジを置く店も増えてきたし、AIによる自動運転が実用レベルに達しつつある。仕事の半分ぐらいが奪われるという予想は正しいのでは、と感じる方も多いのではないだろうか。
一方で医師や教師、弁護士、会計士、ジャーナリストといった専門職であれば、AI時代でも安泰だと思われるかもしれない。いくらAIが高度化しようと、ロボットのお医者さんに診察してもらう未来など当分来ない、というわけだ。しかしオックスフォード大学の教授で、この分野の権威であるリチャード・サスカインドは、テクノロジーの進化から専門家も大きな影響を受けると予想している。そして息子のダニエル・サスカインドと共に執筆した共著『プロフェッショナルの未来』において、未来における専門職の姿を、次の7つのモデルに整理している。
1.伝統型モデル
2.ネットワーク専門家モデル
3.準専門家モデル
4.知識エンジニアリングモデル
5.経験のコミュニティーモデル
6.知識組み込みモデル
7.機械生成モデル
1の「伝統型モデル」は、文字通り、従来通りの専門職が続くという予測だ。ただこのモデルでもテクノロジーの影響をまったく受けないわけではなく、たとえばテレビ会議技術を使って遠方の患者を診察したり、検索技術を使って過去の情報を瞬時に手に入れたりといった進化が生まれるようになる。しかしそれは伝統を壊す方向ではなく、むしろ従来のやり方を守り、効率化する方向に進むものになるとサスカインドは予測する。
2の「ネットワーク専門家モデル」は、ネットワークを通じ、複数の専門家がバーチャルなチームを組んで問題に対応するようになるというモデルである。また一般の人々が、専門家を探したり彼らと交流したりするためのウェブサービス(病院の検索・予約サイトなど)を使い、専門家と関わるようになるというバリエーションも含まれている。