ここまでは、専門家もテクノロジーの影響を受けるといっても、従来の延長線上にあるモデルと言えるだろう。しかし3の「準専門家モデル」からは違う。このモデルでは、AIやその他の支援テクノロジーで「武装」した、専門家とはいかないまでもある程度の知識を備えた人物(準専門家)が専門職の仕事を代替するようになると予測されている。実際に、IBMが開発したAI「ワトソン」の支援を受ける形で、従来は医師が受け持っていた仕事を看護師が行うようになるという例が生まれている。
4の「知識エンジニアリングモデル」は、これまで専門家が独占してきた専門知識を、オンラインサービスとして自動的に人々に提供するというモデルである。そうしたサービスを支えるシステムの構築には専門家の助けが必要だが、ひとたび完成してしまえば、あとはシステムが自動的に(しかもごくわずかな追加費用で)専門知識をユーザーに提供できるようになる。
5の「経験のコミュニティーモデル」は、過去に専門家のサービスを受けたり、あるいは自分で何らかの問題を解決したりした一般の人々が集まり、その知識やノウハウを共有するというモデル。これもSNSやウィキといったウェブサービスの浸透により、珍しいモデルではなくなりつつある。
6の「知識組み込みモデル」は、専門知識をシステムやツールに「埋め込んで」しまうというモデルだ。SFのように聞こえるかもしれないが、サスカインドはPCのカードゲームを例に挙げる。実際のトランプを使って遊んでいるとき、不正をしても、カードから注意されるなどということはない。しかしPC上のゲームの場合、不正をすれば、カードが元の場所に勝手に戻ってしまう(あるいはそもそも移動できないかもしれない)。これまでそうした対応ができる領域は限られていたが、IoT技術とAI技術の進化によって、たとえば「薬を飲み忘れるとお知らせしてくれる薬瓶」のような存在が現実になるなど、その範囲は急速に拡大している。
7の「機械生成モデル」は、文字通りAIが専門知識を生み出すようになるというモデルだ。まだ実例は少ないが、テクノロジーが進化するスピードを考えれば、このモデルが今後主流になる可能性も小さくない。
このようにサスカインドは、複数のモデルを置き、さまざまな分野で異なる方向・異なるスピードで変化が生まれる未来像を描いている。自分が関わっている、あるいは興味のある分野においてどのモデルが主流になりそうか、予想してみるのも面白いだろう。