がん患者というレンズを通すことで、新たに見えるようになったことばかりではない。昔は見えたはずなのに、ということもある。たとえば政治家の言葉や振る舞いだ。同僚の取材メモを読んでも、憤るべきことより、そうした行動の奥底にある人間のもろさに目が向くことが増えた。自分と同じじゃないか。そう感じることもある。

 そんな人間が書いたものが、どれほど役に立つかはわからない。だが私にとっては、読んでくださる方がいることは心の支えであり、病気にまつわる様々な厄介ごとをしのいでいくための力になっている。

 だから、連載を始めるにあたり、厚かましいけれどお願いしたいことがある。

 もしよければ、ちょっとの間、肩を貸してください。

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