認知症初期集中支援は約6カ月間、定期的に訪問することにより、在宅での支援態勢を整えます。畑中さんは、一人でもさまざまなサービスを利用しながら落ち着いて暮らせるようになりました。

 以前は家に引きこもりがちでしたが、近所で月2回開催される「認知症カフェ」を紹介したところ、毎回参加するようになり、地域の人たちとの交流を深めているそうです。

【ケース2】 お金の心配を解消する(成年後見人制度の利用)
単身で身寄りがないので生涯困らない程度の預貯金を用意してきた――という加藤美津さん(仮名・78歳)。しかし認知症が進行して判断力が鈍り、リフォーム詐欺被害にあったそうです。それをきっかけに一気に自信を失い、「さらに症状が進行したらどんどんお金をだまし取られるのでは」「いずれ施設に入りたいと考えているけれど、その判断もつかなくなったらどうしよう」などと不安が募り、あんしんすこやかセンターに相談に訪れました。

 センターの社会福祉士は「成年後見制度」を利用することを提案。成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分な人を法律や生活面で保護する制度で、選定された保佐人や後見人が預貯金や不動産を管理することによってトラブルを防ぐことができます。介護保険サービスや施設の入退所の契約などさまざまな手続きをしてもらうことも可能です。

 すでに判断力が低下していた加藤さんは、世田谷区長が家庭裁判所に後見の申し立てをおこない、認められました。以来、裁判所が定めた後見人が財産管理などをしています。

【ケース3】 お金の心配を解消する(日常生活自立支援事業)
1年前にアルツハイマー型認知症と診断された山本優子さん(仮名・72歳)も、お金に不安を感じています。からだは元気で一人で自立した生活ができていますが、もの忘れがひどくなってお金の計算を間違えたり、買ったことを忘れ何度も同じものを買ったりするようになり、銀行から年金を下ろしてきてもすぐに足りなくなってしまいます。

 山本さんから「お金がすぐなくなってしまう、おかしい」と相談を受けたあんしんすこやかセンターの社会福祉士は、社会福祉協議会が実施している「日常生活自立支援事業」の利用を勧めました。日常生活自立支援事業は、「認知症などで判断能力が低下しているものの、成年後見制度を利用するほどではない」「日常的な生活を支援してもらえば自立した生活ができる」といった場合に利用できるサービスです。

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