これらの名作群を抜け、「原画結集ゾーン」へと入る。一際目を引いたのが「はだしのゲン」(中沢啓治)の展示だ。広島への原爆投下による作者自身の被爆体験に基づいて描かれた自伝的作品で、世界的に知られている名作でもある。国内でも小中学校の図書館に置かれているところも多く、手に取ったことのある人も少なくないだろう。だが、「はだしのゲン」が少年ジャンプで連載されていたことを知る人はどのくらいいるだろうか。
このほか、「ど根性ガエル」(吉沢やすみ)、「サーキットの狼」(池沢さとし)、「東大一直線」(小林よしのり)など、名前は聞いたことのある作品もジャンプで連載していたのかと驚かされた。どれも1970年代の作品だ。
約200点はあろう原画の展示を抜け、出口のほうに向かうと、そこには1968年から1989年にかけて、ジャンプで執筆したことのある全ての漫画作品と作者名が一覧になっていた。数百作品以上はあり、文字がとても小さく並べられている。眺めていると、「光速エスパー」(松本零士)、「おれはゲバ鉄!」(赤塚不二夫)、「悪魔くん復活 千年王国」(水木しげる)、「ライオンブックス」(手塚治虫)など、漫画界の巨匠の名前も散見される。連載時期はどれも創刊初期から1970年代初頭までの間に限られるが、こんな大作家まで、初期の週刊少年ジャンプに連載していたのかと感嘆させられた。
このように、知られざるジャンプの歴史について触れることができるのだが、現在の雑誌の読者層とは明確に異なる。これについて、「週刊少年ジャンプ展VOL.1」を運営する、集英社の担当は「1980年代にジャンプに親しんでいた人達は今や所帯持ちも多い。親子連れでいらして楽しんでいただければ」と話す。今や親子二代でジャンプファンも珍しくないようだ。
「週刊少年ジャンプ展VOL.1」の展示期間は7月18日から10月15日までで、入場料は一般2000円(税込み)。2018年春には1990年代の作品を扱う「VOL.2」、創刊50周年を迎える18年夏には、2000年代から現在までの作品を扱う「VOL.3」が開かれる予定だ。(ライター・河嶌太郎)