これは、いかにトヨタが苦境に立たされているかを物語る。トヨタは、従来、将来のエコカーは水素を使う燃料電池車だと断定して、その開発に集中して来た。しかし、現実には、電気自動車シフトが世界の流れとなり、昨年秋に、やむなく、EV開発に舵を切った。その時も、世界トップメーカー、トヨタの意地なのか、EVも含めて何でもできる体制を整えるというような、負け惜しみの発表をしている。
もう一つの出来事は、トヨタが、EVのトップランナーであるテスラ社の株式をすべて売却したということを半年間も隠していたことが判明したことだ。トヨタはテスラ社の株を3%所有して、協業を目指してきた。その株を2%売却したことまでは知られていたが、最後の1%も2016年末までに売却したことを6月になって新聞各社が報じたのだ。
たかが1%の株の話かと思う方もいるかもしれないが、実は、これが大きな話なのである。それに私が気づいたのは、これを報じた日経の第一報とその半日後に出された記事の見出しとその内容のトーンが全く逆転していたからだ。
最初の記事配信時刻は、6月3日10時27分、その見出しは「トヨタ、テスラ株すべて売却 EV協業見込めず」というものだった。これを見ると、トヨタはEVで協業したかったのだが、それがうまく行きそうにないから、仕方なく株を売ったというように読める。また、記事本文では、「16年末までに手放したもようだ」となっていて、トヨタの正式な確認は取れていなかったことがうかがわれる。さらに、「14年にテスラが電池供給を打ち切ったため、トヨタは一部テスラ株を売却」と書かれていて、今後のEVの競争力の重要な要素である電池の供給をテスラに打ち切られたと読める。普通に解釈すれば、EV開発で先行するテスラに出資して保険をかけていたトヨタが、結局テスラの事業が成功するにつれて相手にされなくなり、電池の供給まで止められ、まったくメリットが無くなったので、やむを得ず株を売ったということになるだろう。