「歴代最高」の評価が、現実的なものになりつつある。昨季、セ・リーグの遊撃手として史上初の首位打者のタイトルを獲得した坂本勇人が、今季も5月25日現在で打率.340をマークし、リーグトップの座をキープしている。
光星学院高校からドラフト1位で巨人に入団した坂本は、プロ2年目で全試合出場を果たした。高卒2年目での全試合スタメン出場は、中西太(当時西鉄)、清原和博(当時西武)に続いて史上3人目で、セ・リーグでは初の快挙だった。初タイトルは、プロ6年目の2012年で、173安打で最多安打を獲得。この年には、あの長嶋茂雄と並んで球団記録となる、猛打賞20回も記録した。遊撃手という肉体的にもハードなポジションで、09年のシーズン途中から連続試合出場を続け、11年7月まで連続試合フルイニング出場225、14年5月まで球団歴代2位となる662試合連続出場を記録している。
プレーヤーとして、強肩と広い守備範囲の遊撃守備も評価が高い。プロ3年目からは刺殺数で4年連続、補殺数も11年と14年にリーグトップを記録した。08年からの7年間で6度、失策数でリーグの遊撃手ワーストも記録したが、15年には遊撃手としてリーグ最高守備率(.982)をマークし、16年には自身初となるゴールデングラブ賞を獲得するなど、守備でもリーグを代表する存在になりつつある。
昨季のタイトル獲得で、「歴代ナンバーワン遊撃手」の声も出始めた坂本だが、過去にはどんな選手がいただろうか。
坂本はセの遊撃手では史上初の首位打者となったが、パ・リーグの日本人遊撃手では、1956年の豊田泰光(当時西鉄)と2010年の西岡剛(当時千葉ロッテ)の2人がいる。数字で言えば、豊田が.325で、西岡が.346。昨季の坂本の.344は歴代最高クラスと言える。遊撃手で二度、首位打者に輝いた選手はいないだけに、今季も打率トップを走っている坂本が、再び首位打者を獲得すれば、NPBでは前人未到の記録になる。
守備面では、「昭和の牛若丸」と呼ばれた吉田義男(元阪神)や、歴代最強の守備力との評価を受けた小坂誠(元千葉ロッテなど)、近年では宮本慎也(元東京ヤクルト)、井端弘和(元中日など)の名前が挙がる。攻走守三拍子揃ったタイプと言えば、石井琢朗(元横浜など)やメジャーでも活躍した川﨑宗則(ブルージェイズなど)、鳥谷敬(阪神)なども忘れてはならない存在だ。ただ、これらの選手と比較すると、長打力を含めた打撃力など、総合力では坂本が上と言えそうだ。坂本に期待されるのは、トリプルスリーを達成した野村謙二郎(元広島)や、日本人遊撃手として初のメジャーリーガーとなった松井稼頭央(東北楽天)らのような大記録やスケールを持った選手越えだ。