重要なポイントをすべて外した上に、読者をミスリードする見出しまでつけてしまったこの記事を読んでわかることは、
(1)環境省が4月13日、2015年度の温室効果ガスの排出量が前年度比2.9%減の13億2500万トン(二酸化炭素〈CO2〉換算)だったと発表したこと
(2)西日本で冷夏だったことが減少要因の一つであること
(3)太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入拡大もその要因の一つであること
(4)原発の再稼働も一因であること
(5)九州電力川内原発が再稼働したことで約410万トンのCO2削減になったと試算されること
(6)排出量は05年度比5.3%減で、減少は2年連続であること
(7)政府が掲げる20年度に05年度比3.8%減とする目標を、森林吸収分なしで達成したこと
(8)CO2排出量の多い石炭火力発電所の建設計画が相次いでいること
(9)したがって、環境省の担当者は「先の見通しは何とも言えない状況」だと述べたことなどだ。
●CO2と経済成長のデカップリングが始まった
今回の報道では大事なことがいくつも抜け落ちている。
まず、温室効果ガス(フロンなどを含む)のうち一番大事なCO2だけ見るとマイナス幅は2.9%ではなく、3.3%と拡大する。
さらに、電力などのエネルギー転換部門に限定すると、6.4%もの大幅減少だ。記事を見ただけでは、エネルギー部門で6%削減ということは誰にも想像できない。
また、九州電力川内原発が再稼働したことで削減された約410万トンは、全体の削減量3900万トンのうち、わずか10.5%に過ぎないということもあえて書いていない。むしろ、見出しに「原発再稼働も一因」と書いて、わざわざ、原発再稼働だけを特記して、「原発が温暖化対策に有効」であると印象付けようとしている。政府から見れば、「優等生」と褒められる表現だ。
さらに、これが最も重要なことなのだが、15年度の実質経済成長率はプラス1.3%であったのに、原発がほとんど動かなくても、大幅にCO2を削減できたということに全く触れていない。