避難計画については、各紙とも課題があるということを報じているが、テレビ朝日の伝えた「原発に向かう避難路」ということを伝えているところはない。あまりにも衝撃的だからなのだろうか。それとも記者たちの「不勉強」のためだろうか。
さらに、この原発は日本海に面していて、朝鮮半島からは目と鼻の先。ミサイルが撃ち込まれれば、核弾頭なしで核攻撃と同様の惨劇となるのは必至だ。とりわけ使用済み核燃料プールは、原子炉と違って、非常に脆弱な構造なので、ミサイル数発で壊滅的被害となる。海上からのテロ攻撃にもほとんど無防備である。攻撃対象としては、最高のターゲットを提供するわけだ。
実は、現在稼働していない他の原発でも、核燃料プールに大量の使用済み核燃料が保管されている。いずれも狙われたらひとたまりもない。
日本の大手メディアは、高浜原発の避難計画の問題までは指摘しても、このテロの危険性については、見出しに使わない。おそらく、「住民の不安を煽り、パニックを起こしたら大変だ」という「配慮」が言い訳として使われるのだろう。福島第一原発事故の際の「メルトダウン報道自粛」と同じだ。
しかし、おかしなことに、安倍政権が伝えるミサイルの脅威については、政権の意向に忠実に従って大げさな報道を続けた。
つまり、北のミサイル危機を煽りながら、ミサイルで最も狙われやすい原発の一つである高浜原発を「安全だ」と言い張る安倍政権のダブルスタンダードを批判するどころか、報道機関自体が同様のダブルスタンダードに陥っているわけだ。
●「温室ガス排出、前年度比2.9%減 原発再稼働も一因」という見出しの意味
メディアの報じ方のせいで、とても大事なことなのに埋もれてしまうニュースはまだある。
「温室ガス排出、前年度比2.9%減 原発再稼働も一因」という4月13日の某大手全国紙電子版の記事はその典型だ。
これを書いた記者は、おそらく詳細な資料は何も見ないまま、環境省の記者レクをその場でパソコンで入力し、記者クラブの机で、さっと打ち直して記事にしたのだろう(ただし、私はこの記者を批判するためにこのコラム記事を書いているわけではない。他の全国紙でもほぼ同内容の記事を掲載するか、報道すらしないという対応だったからだ)。