力投する大阪桐蔭の徳山投手(c)朝日新聞社
力投する大阪桐蔭の徳山投手(c)朝日新聞社

 本日3月30日に準決勝が行われる第89回選抜高校野球。いよいよ大詰めに差し掛かってきたが、ここまで6試合の延長戦、そして春夏の甲子園で史上初となる二試合連続の延長引き分け再試合など、例年以上の熱戦を見せている。勝ち残った4チームについてここまでの戦いぶりを振り返りながら、準決勝、そして決勝を展望する。

 まずは既に敗れたチームを振り返りたい。今大会最大の注目だった清宮幸太郎(早稲田実/東京)はノーアーチに終わったものの、見事な打撃技術とパワーを見せ、改めて今年の目玉であることを示した。初戦の明徳義塾(高知)戦ではあとワンアウトで負けという場面で相手投手が考えられないようなエラーを犯して清宮に打順が回るという場面があったが、それも存在感とスター性のなせる業であろう。チームとしては夏の甲子園出場のためには投手陣の整備が必要不可欠と言える。

 大会を通じて大きな話題となったのが引き分け再試合や延長戦による投手への疲労の問題だ。福井工大福井の摺石達哉投手は2回戦で193球を投じ、左肩痛を発症して再試合は登板回避となった。毎回議論となる問題だが、単なる球数制限やタイブレークの導入で解決する問題ではない。甲子園大会だけではなく抜本的な改革が必要であることは間違いないだろう。

 そしてベスト4に勝ち残った4チームだが、最初のゾーンは大会前に優勝候補の筆頭とみられていた履正社(大阪)が勝ち上がった。初戦で難敵の日大三(東京)を打撃戦のすえ9回に引き離し、続く2回戦は打線が沈黙する中でもエースの竹田祐が2安打完封と接戦をモノにしてきたのはさすがだ。そして準々決勝では再び打線が爆発し、8‐1で危なげなく盛岡大付(岩手)を退けた。特に主砲の安田尚憲がツーベース2本を含む3安打と本来のバッティングが戻ってきたことが大きい。下位打線にも好打者が揃っており、一気にたたみかける攻撃は迫力抜群だ。不安要素は投手陣。これまで竹田が一人で投げ抜いているが、昨年の秋に比べると明らかにストレートが走っていない。コントロールと投球術だけでこのまま勝ち進むのは難しいように見える。準々決勝の大差がついた場面で他の投手を試さなかったことも疑問が残った。2回戦のように打線が沈黙するようだと厳しい戦いとなるだろう。

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