前回の世界戦でモレノを破りガッツポーズをする山中慎介=細川卓撮影
前回の世界戦でモレノを破りガッツポーズをする山中慎介=細川卓撮影
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 近年は日本人ボクサーが世界的な知名度を集めるようになったが、そんな中でもトップクラスに評価されているのがWBC世界バンタム級王者の山中慎介だ。

 すでによく知られていることだが、アメリカで最も権威あるボクシング雑誌“リング”のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで山中は9位にランクされている。“モンスター”の愛称で親しまれる井上尚弥ですら10位。こんなランキングからも、左パンチに一撃必倒の破壊力を持った山中の実力と魅力が認められていることが伺い知れる。

 その山中は3月2日、両国国技館でカルロス・カールソン(メキシコ)を相手に12度目の防衛戦に臨む。勝てば具志堅用高の持つ日本人王者の最多防衛記録13度にリーチがかかるという一戦。過去のファイト映像など見ても、カールソンに脅威を感じる要素は少ないように思える。

「私は多才なファイターで、アウトボクシング、打ち合いの両方に対応できます。この階級では身長に恵まれているおかげで、ジャブを使ってリズムをコントロールするのが得意。両方の拳にパワーも秘めています」

 事前のインタヴューでそう述べていたカールソンだが、“多才”という言葉は裏を返せば“特筆すべき武器に乏しい”と言い換えられる。デビュー12戦目以降はほとんどの試合をアメリカ西海岸で行ってきたが、米国内でもプロスペクトとみなされてきたボクサーではない。もちろん油断は禁物だが、山中が順当に中盤以降のストップ勝利を飾る可能性は高そうだ。

 このように充実のキャリアを過ごしてきた山中に関して、1つだけ残念なことがある。母国以外でも高い評価を受けながら、一時は可能性が噂されたアメリカ進出、あるいは世界的な大物とのビッグファイトを実現できていないことだ。少々気が早くなるが、カールソンに勝った後は、ぜひともビッグネームと対戦して欲しいと願わずにはいられない。

 現在のバンタム級は必ずしも層の厚い階級とは言えない。例えばWBA同級正規王者ジェイミー・マクドネル(イギリス)、WBAスーパー王者ザナト・ザキヤノフ(カザフスタン)、IBF王者リー・ハスキンス(イギリス)らのタイトルホルダーと対戦しても、世界的な注目を集めるビッグファイトにはなるまい。しかし、周辺の階級には著名選手が存在する。

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