痴漢やセクハラなどが日常的に起こっているように、性暴力被害は決して特殊なことではない。

 最も深刻なレイプ被害についての2014年度内閣府の調査では、日本で約15人に1人の女性(6.5パーセント)が異性から無理やりに性交された経験があり、レイプ被害を受けた時期が小学校入学前および小学生のときの12歳以下だった人も、全女性の約140人に1人(レイプ被害者全体の11.1パーセント)いることが明らかになっている。

 統計では拾いきれない被害者もいるし、男性や、セクシャルマイノリティの被害は全体的な統計も得られていない状況だ。

 この数字を少ないと思うか、多いと思うか、立場によって受け取り方は違うかもしれない。でも、私は「一人でもいればそれは多すぎる」と思っている。

 このメッセージは、アメリカ政府が実施している女性への暴力防止啓発運動から学んだものだ。

 2014年4月からホワイトハウスは「1 is 2 Many」という動画を公開し、大きな話題を呼んだ。

 60秒の映像の中で、大物の男性俳優、スポーツの有名なスター選手、成功した起業家などが次々と画面に現れ、こう語っていく。

「俺たちは止めるんだ、聞いてくれ」
「彼女が同意していない、もしくは同意の表明ができないなら、それはレイプだ。暴力なんだ」
「犯罪なんだ。間違っている」
 そして、バイデン副大統領やオバマ大統領からのメッセージが発せられる。
「私たちは、男性全員が『解決策』の一部となってくれることを望んでいる」
「性暴力に終止符を打つのは私たち全員の責任なのです。それはあなたからスタートします」
「1 is too many ――一人でもいれば(一度でもあれば)それは多すぎるのだから」

「一人でもいればそれは多すぎる」。この言葉は私の胸を深く打った。

「性暴力が起こるのは仕方がないことだ」「別に減るものじゃない」「あれこれ言い立てる人のほうがおかしい」「我慢できない被害者のほうが悪い」。

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