壁は震災の日が近づくとライトアップされ、その初日には、つどいが開かれる。つどいには神戸市民らも訪れ、震災の犠牲者を追悼する。17年のつどいには、神戸市や淡路市などから約60人が集まった。壁の前で黙とうし、三原さんが作った歌「リメンバー神戸の壁」を歌った。

 壁は、震災後に生まれた若者にも、震災の教訓を伝えている。集いに参加した地元の淡路高校2年の男子生徒は、高校で防災と心のケアについて学んでいる。そして、両親や教諭らに震災の体験などを聞くことで知識を深めていき、今では震災の語り部としても活動している。

 男子生徒は「壁がきちんと保存されていることに驚いた。卒業しても、震災の話が出た時に、『実はこんなことがあったのですよ』と自分なりに語り継いでいきたい」と語った。一緒に参加した40代の母親は「いろいろなことを見てきた壁なのだなあとしみじみ感じた。地震はいつ起こるか分からない。ご近所さんとつながりを持ったりして、日常的に備えたい」と話す。

 また、壁を残すだけでなく、活用していこうという動きも起こっている。リメンバー神戸プロジェクトと北淡震災記念公園、淡路市の三者は15年、神戸の壁や野島断層の継承、活用を進める「継承発展実行委員会」を設立。震災の“生き証人”を将来に引き継いでいく方法を模索している。

 三原さんと委員会の共同代表を務める公園の総支配人、宮本肇さんは「壁は、公園を訪れた人に命の大切さを訴えかける。震災の教訓を学び、生かし、伝える存在として発展させ、個人の防災・減災意識にもつなげていきたい」と意気込む。三原さんは「ものがなければ伝わらないこともある。東日本大震災や本地震などの遺構を残す支援もしたい」と話す。

 震災の遺構の保存については、「見ると悲しいことを思い出す」と否定的な意見もある。しかし、遺構が記憶の風化を防ぐ面があるのも、また事実だ。改めて神戸の壁や野島断層を見ると、静かに震災の悲惨さ、備えることの大切さを訴えかけているように感じた。壁は、普段は有料で公開されているが、17年1月17日まで行われるライトアップの時間帯(午後5時半~10時)は無料で見学できる。(ライター・南文枝)

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