電力会社が原発推進の立場をアピールするため会場に社員を送り込むなど、その運営方法に批判が集まった「意見聴取会」。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、その中で政府が提示した三案の選択肢を「うまくできている」と表現する。その理由とは……。
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全国で、日本の未来のエネルギー政策をどうするかを国民に問う「意見聴取会」が開催された。
この会に参加を希望する者は、政府の提示する三つのエネルギーの未来像のどれに賛同するかを明らかにし、抽選で選ばれると、会場でその理由を述べることができる。
その三つの選択肢が実に「うまく」できている。政府が提示する三つの案とは、2030年、つまり今から18年後の発電方法について、(1)原発比率0%(2)15%(3)20~25%、の三つのパターン別に、それぞれの電気代、二酸化炭素排出量、原発以外の発電方法などをまとめたものだ。どの会場でも発言希望者が一番多いのは原発比率をゼロにする案だ。
取材した記者によると、発言者には会場から「惜しみない拍手」が送られ、さながら意見聴取会は毎週末に官邸前で行われている反原発集会と化したそうだ。しかし正直なところ、反原発の人々がこの案の支持者に「惜しみない拍手」を送るのが不思議でならない。反原発活動家の人々が求めるのは、先般再稼働した大飯3、4号機を含めた日本の全原発の即時廃炉だ。
しかし、(1)案が目指すのは、あくまでも2030年の原発ゼロであって、即時全廃ではない。つまりこの案が採択されたとしても、政府は大手を振って日本中の原発を再稼働することができるのだ。現に(1)案のどこにも、「原発を稼働させない」とは書かれていない。
※週刊朝日 2012年8月17・24日合併号