さて今回はどうしようか。空港の案内所で聞くと、こう説明された。
「86番の急行バスの運行がはじまりました。ハノイ駅行きで運賃は3万ドンです」
乗ってみることにした。バス乗り場に向かうと、その手前でベトナム航空のオフィス近くに行くミニバスの運転手が声をかけてくる。86番のバスに乗るというと、
「うちと運賃一緒だよ。乗らない?」
と誘ってくる。それを振り切って進むと、86番バスが待っていた。
空港を出発したバスは、1時間ほどでハノイ駅に着いた。駅には専用のバス乗り場もできていた。その案内を見ると、朝の5時台から夜の9時台まで、1時間に2~3本の割合で運行している。
「ようやくできたか」
バスを降りてつぶやいていた。世界の空港のエアポートバスに相当するバスがやっとハノイにもできたのだ。利用者はこれからも増えていくだろう。はじめてノイバイ空港に降り立ってからかれこれ20数年。長かった。
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など