さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版、「世界の空港・駅から」。第15回はベトナムのノイバイ空港から。
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バンコクをたったベトナムのLCC、ベトジェットが着いたのは、ハノイのノイバイ空港のターミナル2だった。このターミナルは、一昨年(2014年)の暮れに完成した。国際線はすべて、ターミナル2を利用する。
以前のノイバイ空港は狭く、いつも混雑していた。そして照明も暗かった。それに比べると広く、明るい。その分、ちょっと間延びした感じもするが。
ベトナムの空港の難点は、市内への足だ。
空港からハノイ市内へは、タクシー、ベトナム航空のオフィス近くに着くミニバス、路線バスという手段があったが、どれも欠点が目立った。
タクシーは到着階で声をかけてくる運転手は必ず“ぼる”ので、その先にあるタクシー乗り場で待つ車を選ぶ。これが定額制だったり、メーター制や交渉制だったりとコロコロ変わる。おそらく空港に乗り入れる利権と絡んでいるのだろう。市内まで30万ドンから40万ドン、日本円で1500円から2000円という値段にもちゅうちょした。ハノイ市内の安ホテルなら、1泊30万ドンを切るからだ。
一方、ベトナム航空のオフィス近くに向かうミニバスはまさにアジアだ。運賃は3万ドン、150円前後。本来はベトナム航空利用者用なのだと思うのだが、ほかの航空会社を利用していても、乗り込むことができるときもあった。ところが相手も強者で、泊まるホテルまで行くから倍払わない?などと誘ってくる。運転手とのアジアらしい駆け引きが必要になった。
路線バスは5千ドン、約25円以下と、うれしくなるほど安かったが、これがとんでもなく時間がかかる。タクシーなら40分ほどの距離なのだが、2時間近くかかる。車内でひと眠りしても、まだ市内にたどり着いていないことも多かった。英語が通じないから、降りるバス停もよくわからない。それでも僕はよく路線バスを使った。