「我が家のカメの中で一番の長寿は約37歳ですよ。高校時代に買ったカメが、私が54歳になった今も元気で、発情さえしています」。
そう言うのはカメ研究の第一人者、愛知学泉大学教授の矢部隆さん。自宅にはさまざまな種類のカメが多数飼われている。
イヌやネコほどではないにしても、身近なペットとして人気を誇っているカメ。一般社団法人ペットフード協会の調べでは、約5万人を対象にした調査で飼育世帯率イヌ14.4%、ネコ10.1%、カメは2.1%という結果が出ている(平成27年調べ)。
ペットにすることが多いのはリクガメか水生カメ。特に多いのは水生カメのミシシッピアカミミガメ(以下、アカミミガメ)である。このカメは一般に「ミドリガメ」としてペットショップで売られているカメだ。
このカメを飼っている人たちには「口をパクパク動かす様子が愛らしい」「エサの時に『ゴハンだ!』と言わんばかりにゴトゴト音を立てながら寄ってくるのがかわいい」など、その行動が大きな魅力となっている。
特に求愛行動には人気がある。水に浮かび、オスとメスが向かい合って前に伸ばした両足を付き合わせるようにし、オスは伸びたツメを小刻みに震わせてメスにアプローチする。ある一家の水槽にはオスしかいないので、メスの代わりになるかと子どもが水槽の外にライオンのフィギュアを置いたら、それに向かって求愛していたそうだ。
そんなカメ好きの間で今、ひそかに人気を集めているツールがある。アカミミガメの稚ガメと成体(大人)のリアルな実物大ぬいぐるみ“かめぐるみ”だ。これは型紙をダウンロードしてインクジェットプリント可能な布に印刷、自分で縫い合わせて作るものだが、自作したかめぐるみを自宅のカメの横に並べて写真を撮るカメ好きも見受けられる。この型紙を提供しているのは、環境省である。
「実は、このかめぐるみは“アカミミガメ対策普及啓発ツール”の一環です。あわせて、野外でよく見られるカメの特長を知るための“ピクチャーカード”とポスター、チラシも制作しています。ポスターとチラシのイラストはカメ好きに大人気のイラストレーター「みのじ」さんの手によるものです」
(公財)日本自然保護協会(以下、自然保護協会)の大野正人さんが説明する。自然保護協会と認定NPO法人生態工房では、環境省の事業として、このツールの企画制作を担当した。