リオ五輪で女子選手史上初のオリンピック4連覇に挑む吉田沙保里。(写真:Getty Images)
リオ五輪で女子選手史上初のオリンピック4連覇に挑む吉田沙保里。(写真:Getty Images)
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 8月のリオデジャネイロ五輪で、女子レスリング53㎏級代表の吉田沙保里は女子選手で史上初の五輪4連覇に挑む。連覇すると、世界選手権とあわせて世界17連覇になる。吉田が初めて五輪に出場したのは12年前、女子レスリングが公式種目になった2004年のアテネ五輪だった。当時の吉田は大学4年生の21歳。選手村で柔道の谷亮子や野球の和田毅など、他競技の選手と写真を撮ってはIDカードホルダーにコレクションしていた。厳しい指導で知られたシンクロの井村雅代コーチにも同じように声をかけ、遠巻きにしていたシンクロ選手たちから驚かれた。金メダルをとった直後に「4年後の北京でも金をとります」と連覇宣言をした屈託ない明るさは、今も変わらない。

 アテネ以来、女子レスリングは金7、銀2、銅2を五輪で獲得し日本のお家芸になった。なかでもタックルで次々と得点するレスラーとしての強さと、コミカルなCMにも照れずに出演する親しみやすさをあわせ持つ吉田は、日本の女子レスリングを象徴する存在となっている。

 吉田の強さを支えるタックルは、自宅に併設された小さな道場でレスリングの全日本王者だった父の故・栄勝さんに3歳のときから教わったものだ。栄勝さんが指導する「一志ジュニア教室」の練習は、365日ほぼ休みなし。道場での父は厳しく、構えや踏み込んだときの足の位置など、少しでもおろそかにすると、正確に出来るまで反復させられた。おかげでタックルが「体にしみこんでいるから自然に出てくる」と吉田はいう。

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