あさやけ子ども食堂がここまで盛況な背景には、先のワクワクネットが行っている「池袋本町プレーパーク」や「無料学習支援」といった活動とのつながりが大きいだろう。プレーパークは子どもたちに向けて遊び場を提供する事業で、午前中は保育園に入ることができなかった母子らが、午後は学校帰りの子どもたちが、遊び場として利用する場となっている。一方、無料学習支援は子どもたちが学校での宿題をすませたり、分からないところをボランティアスタッフなどに尋ねることができる場。勉強の悩みを解決するほか、子どもたちの居場所としての役割も果たしている。
プレーパークや学習支援に携わる栗林さんは、その延長として子ども食堂を紹介している。プレーパークの利用者にとっては、顔なじみの栗林さんからの紹介なので気軽に子ども食堂も利用することができた。そこに地域の人の口コミも相まって、子ども食堂は多くの人が集う場になった。
そんな大人気のあさやけ子ども食堂、どんな人が利用しているのだろうか。
「今多いのは、乳幼児~小学校低学年の子どもたちと、そのお母さん。あとはシングルマザーの方もいますね。シングルマザーの方は、シングルならではの大変さなんかをお互いに話し合えるのが、いい気分転換にもなっているようです。なかにはお父さんが仕事でいつも遅いので『母子ふたりでは食事が寂しいので』といった理由で利用する人もいます」(栗林さん)
食堂のにぎやかで明るい雰囲気は「貧困」のイメージとは程遠い。食堂に来る母子も、母親同士や、地域とのつながりを求めてやって来ている印象だ。だが、一見それとわからなくとも、助けを必要としている人は確実にいるという。子ども食堂をきっかけに仲良くなったとある母親から、栗林さんはメールでこんな相談を受けたことがある。
「とあるお母さんは、子どもが高校に入る際、制服代や教科書代、体操着もろもろで14万円学校に支払わないといけなかったんですが、それがなくて区の貸し付けを受けることになったんです。ただ、貸し付けを受けるにあたって、区役所から『お子さんを連れて来てください』と言われたそうで。そのお母さんは『確かにうちはお金がないからとは言っていたけど、子どもと一緒に区役所でお金を貸してください、というのはちょっと抵抗があるんです』と悩んでいました」(栗林さん)
この悩みも、子ども食堂で「顔なじみ」になったことで打ち明けることができたものだ。そして栗林さんとともに行政と話し合うことで、この悩みも解決に向かったという。
栗林さんは、あさやけ子ども食堂の意義についてこう話す。
「私たちが地域でできることというのは、そこまで問題が深刻になっていない、でもいつ深刻になってもおかしくないような状態の、『狭間』の親子。そうした親子と、プレーパークや子ども食堂で顔なじみになっておくことで、いざというときにサポートができる体制をつくっておくことは、(貧困対策として)かなり有効なんじゃないかと思うんです」
貧困の「狭間」にある人々を、地域のつながりで助ける。あさやけ子ども食堂にはそんな役割もあるようだ。一方で、貧困から救うというと大げさに聞こえるが、実は私たちが簡単にできる支援もあると栗林さんは話す。