では子どもたちを育むため、具体的にどういった思考が求められるのか? 第2部では「創造的な学びの場」を提供するNPO法人・CANVAS理事長の石戸奈々子氏、オリンピックで3連覇した柔道家の野村忠宏氏、ベネッセ教育サービス開発本部長の村上久乃氏らによるトークセッションが行われ、次のような意見が交わされた。

「学校では個々人の能力が測られますが、社会ではチームの成果が求められる場合が多い。私は子どもたちに、『自分に足りないものがあったら誰かの力を借りる』『他人と一緒になってできたことは、自分ができることと考えてもいい』と話しています。今後、ますますグローバル化していく中では、そうした協業性を見つめ直すことも必要ではないでしょうか」(石戸氏)

「私は祖父が道場を開き、父も高校の柔道部監督、叔父はミュンヘンオリンピックの金メダリストと柔道一家に育ちました。そのような環境に生まれながらも、柔道だけでなく水泳やサッカー、野球、書道……それに塾も2つ掛け持ちするなど、いろいろなことをやらせてもらったことが今になって良かったなと感じています。自分が持つ柔道のセンスに気づいたのは、失敗も含めたさまざまな経験があってこそですから」(野村氏)

 また、具体的な教育の方法論として村上氏は「大人も子どもも、自分の強みと弱みを認識し、それをどういかすかさえ考えれば、新しい価値を生み出せると思います。その上で、教育においては“決定的な弱み”をつぶしておく必要があるんですね。例えば、これまでの進研ゼミは教材をお届けする通信教育でしたが、双方向型の通信教育『進研ゼミプラス』をスタートさせており、1人ひとりに合わせた教育を実現します」と説明。「保護者やマスコミの方から『進研ゼミはデジタル学習になるのですか?』と聞かれますが、デジタルはあくまでもツール。定期テストの目標を“赤ペンコーチ”と一緒に決めたり、電話やウェブの“勉強なんでも相談室”で365日相談を受け付けます。進研ゼミプラスによって本日のテーマになっている『自ら学ぶ力』の環境づくりができれば」と抱負を述べた。

 現在、経済的に厳しく塾へ行けない子どもに対する公的な教育支援から、一流校合格を目指す名門予備校まで、さまざまな教育システム・メソッドが生み出されている。だが、野村氏の「さまざまな経験が生きている」という言葉にあるとおり、ひとつのやり方にとらわれず、ときには複数の方法を組み合わせるなどの工夫が、子どもを知性の面でもメンタルの面でも豊かに育むカギとなりそうだ。

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