若い女性の「なりたい職業」として人気の医師。ただ「激務でプライベートの時間がないのでは」と不安を抱く人も少なくない。実情はどうなのか? 『医学部がわかる』(AERAムック)では、女性医師から話を聞くとともに、20~40代の女医107人(既婚72人・独身35人)を対象に行ったアンケートからも探った。今回はその一部、結婚や子育てについて紹介したい。
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女の子の間で「医師」は人気の職業だ。第一生命が2015年に実施した「大人になったらなりたいもの」調査(小学生と未就学児を対象)では、学校の先生や歌手・タレントを上回る4位にランクイン。04年調査の8位から、大きく順位を上げている。女性医師が活躍するテレビドラマ「梅ちゃん先生」や「ドクターX」を見て、憧れた子も少なくないという。
15年の医師国家試験では合格者の約32%が女性で、将来的には10人の医師のうち3人が女性となることが予測される。やりがいが大きく、収入も高い「医師」。半面、長時間労働で、女性医師は未婚率が高いというデータもある。
美容皮膚科医でクリニック6院の総院長を務める北山英美子さん(40)さんは、5歳と1歳の娘の母親でもある。朝は2人を保育園に送ってから出勤。外来患者の診察や施術、スタッフ教育などをして、午後6時ごろに仕事終了。保育園に娘を迎えに行き、そのまま帰宅する。
「03年に1院目を開院したときは、休みがほとんどありませんでした。今は医師とスタッフが充実しているので7時間半勤務です。仕事と子育ての両立はなんとかできています。ただ大変なのは、子どもが高熱を出すなど病気になったとき。保育園は預かってくれないので、急遽ベビーシッターを探さないといけない。実家の母親の手が空いているときは、預けてから出勤しています」(北山さん)
子どもを出産した女性医師は復職後、育児と仕事を両立させられず、悩むことが多いという。そもそも医師の世界には産休・育休や時短勤務の制度が確立されていない。女医107人アンケートでも「子どもとの時間が十分ではない」(40代、内科)といった悩みが多かった。
かたや「育児中は仕事が満足にできない」(30代、小児科)、「勉強の時間が取れない」(40代、内科)との声も。医師になった以上はスキルをアップさせたい、一人でも多くの患者を救いたいという気持ちもやはり大きいようだ。