あと2週間余りでロンドン五輪が開幕する。1964年の東京五輪以来、12大会すべての応援に駆けつけ、「13大会連続参戦」を目指しているオリンピックおじさんこと、山田直稔さんが2004年のアテネ五輪を振り返る。

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 近代オリンピック発祥の地・アテネでは、日本勢が大活躍だったよね。金メダルの数は、私が初観戦した1964年の東京と並ぶ史上最多タイの16個。37個というメダル総数は、ロスの32個を抜いて史上最多だったんだ。

 競泳の平泳ぎ2冠に輝いた北島康介さん、女子マラソンの野口みずきさん、柔道女子48キロ級のヤワラちゃん(谷亮子さん)の連覇......。印象的なシーンを挙げるだけでも、キリがないほど。

 そんなアテネの開会式は、私にとって言葉では表現しきれないほどの感動があったんだ。何がって? 聖火の点火式ですよ! なにせ、この私が聖火リレーに参加したんだから。
 
 開会式の2カ月余り前の6月6日。都心の53キロを136人でつないだの。

 2日前に豪州・シドニーをスタートした聖火を右手に、大相撲で通い慣れた国技館の付近を約400メートル走った。700グラムのトーチが、ズシリと重く感じたね。

 実は、私は閉会式後に「引退宣言」したんだよ。

 もう78歳だし、五輪の聖地での大会を応援できた。やめるには丁度よかったの。

「引退は体で覚えないと」
 と、シナリオを描いたの。きれいに剃った坊主頭で帰国して、みんなを驚かせよう、と。でも、周りから、ギリシャの床屋で頭に剃刀(かみそり)を当てるのは衛生的に問題があると言われてね。そのまま帰ってきたらタイミングを逃しちゃった。ワッハッハ。

※週刊朝日 2012年7月20日号