「嫌な上司なら、知らんぷり……」としたいところだが、いずれもひと声かけて判断を仰ぐのが鉄則である。したがって、勝手にクリーニングのタグを切ったり、「健康のために禁煙してください」と言ったりするのはNG。上司の人間性を理解し、仕事をしやすいよう最大限のサポートをする。秘書は分をわきまえ、決断を下してはいけないのだ。過剰に立ち入らないのは、「越権行為」と批判を受けないための自己防衛でもある。

 問題はいずれも、上司と秘書、秘書同士、来訪者と秘書などが登場するさまざまな場面を想定し、「どう対応すべきか」を問う内容である。「組織人の心得」とも読める。秘書検定1級で、準1級の面接試験審査員を務める松崎妙子さんに、秘書検定に挑戦する意義について聞いてみた。

「最近は、男性の上司に女性秘書が仕えるばかりではなく、女性の上司や、年齢が逆転しているケースも多く見受けられます。上司と部下の良好な関係は、お互いを尊重し、人間としての基本的なマナーを大切にすること。秘書検定は人柄教育です。嫁姑などの人間関係にも応用できます」

 松崎さんは理想の秘書像について次のように述べる。「感情をコントロールでき、上司や顧客はもちろん職場で接する人すべてに対して誠実で、うそをつかず、『感じがいい』と思われる対応ができる人」。人間的に苦手な上司であっても、感情をコントロールすれば衝突は避けられる。また、上司を思うあまり、他者にうそをつくような不誠実な心構えでは補佐役は務まらないということだ。

「マナーを守り、筋を通せばセクハラやパワハラも生じにくい」と松崎さん。秘書検定の問題集は男女にかかわらず、組織人のバイブルなのである。とすると、アラフォー世代は上司の立場から読む必要が生じているのかも……。秘書検定への挑戦は何歳からでも遅くはない。

(ライター・若林朋子)

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