医者には特定分野の病気や診察や治療をする、その分野に精通した医師である「専門医(スペシャリスト)」と、特定の専門分野はないが、多くの病気についての幅広い知識をもつ「総合医(ジェネラリスト)」がある。

 一見「専門医」の方が良いように思えるが、実際にかかりつけ医として求められるのは、最新の技術や制度を十分に踏まえたうえで、患者の身になって最善の処置、的確な対応をしてくれる「総合医」だ。しかし、総合医として広範囲にわたる知識をアップデートし続けることも、さらに患者が医師の知識が最先端かどうか見分けるのも難しいのが現実だ。

 例えば、患者が自分の疾病に関する最新知識をインターネットなどから得て、診察の際に聞いたところ、医師がその知識を持ち合わせていなかったとする。だからといってその医師のレベルが低いと判断することはできない。その知識が総合医にとって普遍的に必要なものなのかどうか、患者には見分けられないからだ。

 こういった、にわか覚えの知識で医者を試すよりも、たずねたときの対応から、総合医としての資質を推し量ることの方が大切だという。患者の健康に対する気配りが、医師としての基本的要件であり、自分の医療スキルを示す対象としてしか患者を見ないような医師は、紹介したくないと真野氏は断言する。

 本書では、デンマーク、イギリス、オランダなど、世界のかかりつけ医制度を紹介し、現在、まさに過渡期にある「かかりつけ医」について、日本の目指すところを探っている。健康を維持し、生活の質(QOL)を重視した人生を送るために、どのように医師と関係性を築くべきか。誰しもが直面する老いや死を、より幸せに迎えるためにも人生の早い時期から留意しておきたいところだ。