社員の権利は主張するが、仕事はほとんどしない。注意されると法を盾に拒む。――そんな「モンスター社員」の存在に頭を抱えている企業は数多い。
時として百戦錬磨のブラック企業経営者も困らせるモンスター社員たちは、今、企業を困惑させている。「企業経営にとって、もっとも脅威」(兵庫県の地場建設業者)といっても過言ではない。
下手に扱えば何をやらかすか、わからない。勤務態度や仕事上での注意は逆恨み、労働基準監督署に通報するだけならまだしも、インターネット上にあることないこと書き散らかすので、下手をすれば信用も失いかねないからだ。
さりとて、辞めさせようにも明確な理由も見つからない。たとえ社員の重大な過失があったとしても、それを理由に解雇することは「現実的には難しい」(大阪府内の労働基準監督署関係者)側面もある。
結局、社員が自発的に退職するのを待つしかない。もちろん、それまで企業は給与をきちんと支払い続ける。仕事をしない、だから何も生み出さない非生産的な社員に支払う給与は、企業側にとって「無駄な経費」であることは企業経営者ならずとも誰しも察しがつく。
5月18日、塩崎恭久厚生労働相は全国の労働局長に対して、違法な長時間労働を繰り返す企業名を行政指導の段階で公表するよう指示した。行政による「ブラック企業」の企業名公表である。
一向に減ることのない長時間労働を抑制する取り組みとして評価する声がある一方、その対象は複数の都道府県に支店や営業所がある大企業のみが対象ではあるが、「その実効性は極めて高い」(厚生労働省関係者)という。こうした形での企業名公表は、やはり企業側にとっては「大きなイメージダウン」(1部上場の食品メーカー広報担当者)となるからだ。