だが、行政やインターネット上における民間有志の動きは、逆に「モンスター社員の動きを活発化させる」との懸念もある。長年、ハローワークに勤務する厚労省職員が語る。
「モンスター社員の目的は、ずばり『失業保険狙い』です。雇用保険(失業保険)の給付資格が生じるのは、大ざっぱにいえば満1年勤めればいい。またその保険金給付も自己都合退職なら最大でも150日、しかし会社都合なら最大330日受給できる。行政、インターネット上のブラック企業名公表の動きで、その規模問わず企業側が従業員に萎縮している。そこに彼らモンスター社員がつけ込むという構図なのです。まさに『プロ社員』といってもいいでしょう」
こうした声を裏付けるかのように、過去、正社員として就職しては退職、失業保険給付を繰り返し受けてきたAさん(45歳・男性、兵庫県在住)はその実情をこう明かす。
「ブラックといわれる会社は、当然、何か問題がある。だからこそ、入社しやすく、居座りやすい。正社員として就職して、失業保険給付の条件を満たすことが仕事だ。世間で騒がれている長時間勤務や上司からの厳しい指導もやり方次第でいくらでも回避できる」
最近までAさんは地場精密メーカーで正社員として製造業務に携わっていた。そこはブラックとの風評を時折耳にするところだった。拘束時間が約12時間と長く、給与は年齢や経験に応じて月額16万円から21万円とかならずしも高給とはいえない額というのがその理由だ。