クリエイティブな教育を行うという本来の目的と、こうした現場での実態との乖離を防ぐには、Project(プロジェクト)、Peers(みんなで考える)、Passion(情熱)、Play(遊び)の「4つのP」が必要だと、同教授は提唱する。最後のPlayに関しては、「教育なのに、遊び?」と思う人もいるかもしれないが、たとえば幼稚園で子どもたちは積み木でタワーをつくる、クレヨンで絵を描く、友達とボール遊びをする、というような「遊びのプロジェクト」を通して学びを得る。そして、プロジェクトの完成を見るには、わからないことについて考える、試行錯誤する、などの過程もあり、単なる遊びを指すものではないと説明した。

 こうした理念を基に、同教授は自身の研究グループを「Lifelong Kindergarten(生涯幼稚園)」と名づけている。講演に続いて行われた、レズニック教授、同志社女子大学の上田信行特任教授などによるトークセッションでも、あらためて教師・生徒という枠組みにとどまらず、幼稚園での学びのような教育も必要であるとの議論が展開された。

 ダイバシティー(多様性)という言葉を聞くことの多い昨今だが、多様性を受け入れ、さらにその人自身が多様性のあるクリエイティビティを発揮するためには、童心に返るのもその方法の1つといえそうだ。

 レズニック教授が提唱するプログラミング教育も、一部の高度なプログラマーの育成ではなく、誰もがこれからの社会を生きていくために必要な「クリエイティブな力」を育てることが目的。大人が知っている答えを、子どもに効率的に教えていく教育から、大人も子どもも答えを知らない問題を解決する教育への転換が、今目指されている。

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