状況を客観視しながら修正を加えていく活動は「メタ認知」の力の育成につながり、かつプログラミング思考を育てる狙いがあるという。写真や映像、ダンスなど、各分野のプロフェッショナルによる力添えがあるとはいえ、動画の演出・出演を主体的に行うのは小学生たち。教える、教えられるという枠組みの中で制作するのではなく、子どもが自ら考え、そしてコミュニケーションを図りながら1つの作品をつくり上げることを狙ったものだ。

 18人の小学生はそれぞれ個性的で、何も言われなくてもアイデアを提案する子がいれば、なかなか口を開かず、進行役のスタッフにマイクを向けられてようやく話し始める子も。しかし、時間が経つごとに打ち解けた雰囲気となり、チームごとでどのような動画にするかの議論が始まると、意見を言いづらそうにしている子に仕切り上手な子が手助けしてあげる、といった場面も見られた。

 制作した動画は、ホールに場所を移して行われた第2部の冒頭で公開。参加した小学生も立ち会い、「自分たちのつくったものがこんな形になるなんて、すごいと思った」「またやってみたい」といった感想が聞かれたのと同時に、「編集してくださった方はすごい」とスタッフを気遣う声もあり、その大人びたコメントに会場はあたたかい笑いで包まれた。

 続けて行われたのは、マサチューセッツ工科大学メディアラボのミッチェル・レズニック教授による講演。同教授は学習用プログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」を開発した人物で、デジタルと学び、そしてクリエイティブな学びを考える観点から、今回招かれた。

 講演では、世界中の子どもたちがScratchを用いて制作した、大人顔負けのプログラミング作品が紹介されたが、一方で次のような「反面教師」となり得る事例があったと披露した。

「Scratchのオフィシャルサイトには、世界中の子どもたちによる1万余りのプログラムが公開されています。ある朝、サイトを見ると50の全く同じ作品が投稿されていました。最初は『バグが起こったのではないか』とも思いましたが、全く違う50人の子どもたちが公開したのも確か。よくよく調べてみると、50人は同じ学校の同じクラスで、先生の『ああしなさい、こうしなさい』という指示のまま、プログラムを公開していたというのがわかりました。これでは、プログラミングは学べたかもしれませんが、クリエイティブな思考を育むことはできません」

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