現在も小泉今日子は、「最後から二番目の恋」シリーズなどで、自ら「主役」を演じています。一方で、「あまちゃん」をはじめ、若手を光らせる役割でも成果をあげています。いつまでも「主役」ばかり演じようとして、他人をサポートする立場に回らない。その結果、「イタイ人」として扱われるようになり、「主役」も「脇役」もまかせてもらえなくなる。そういう「ダメ中年」と対照的なポジションに、小泉今日子はたどりついています。
小泉今日子は、「36歳の危機」を脱したころ、20歳年下の亀梨和也と交際していました。「主役」以外を演じることができたから若者を魅了できたのか、亀梨とつきあう中でそれを学んだのか。その点について小泉今日子は何も語りません。若さの絶頂にいる恋人とかかわりながら、「主役」でありつづけるこだわりを諦めて、「手放すべきもの」と真剣に向きあった。事実としていえるのはそこまでです。ただし、「本当に若い人間」と身近に接したことで、小泉今日子に変化が生まれたことは十分想定できます。
現在の小泉今日子は、TPOに応じて、どんな立場にも移動できる自在さを身に着けています。最近、久しぶりに恋愛スキャンダルが報じられましたが、噂の男性は同世代でした。ニュースの真偽はわかりませんが、どういう年齢の相手とも「いい関係」を築ける懐の深さを、彼女が備えたように感じました。
※助川幸逸郎氏の連載「小泉今日子になる方法」をまとめた『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』(朝日新書)が発売されました
助川 幸逸郎(すけがわ・こういちろう)
1967年生まれ。著述家・日本文学研究者。横浜市立大学・東海大学などで非常勤講師。文学、映画、ファッションといった多様なコンテンツを、斬新な切り口で相互に関わらせ、前例のないタイプの著述・講演活動を展開している。主な著書に『文学理論の冒険』(東海大学出版会)、『光源氏になってはいけない』『謎の村上春樹』(以上、プレジデント社)など