第18回度手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の受賞記念として、羽海野チカさんとヤマザキマリさんの公開対談が行われた。羽海野さんにとって、公の場での対談は初となった。対談相手のヤマザキさんは、羽海野さんの親友で、自身も『テルマエ・ロマエ』で第14回の同賞短編賞を受賞。貴重な対談をほぼ全文の形で紹介する。
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■羽海野チカさん“勇気の甲冑”で登場
ヤマザキマリ(以下ヤ):今回は大賞受賞、おめでとうございました。私、住んでいる場所がイタリアなものですから、今朝11時に飛行機で成田に到着しました。もしかするとそのままここにこなきゃいけなくなるかもとドキドキしてたんですが、一旦仕事に戻って、シャワーを浴びてきました。
羽海野チカ(以下羽):受賞したらその後にトークショーがあるのを知らなくて、びっくりしてパニックを起こしていたら、マリさんが「授賞式、観に行くよ~」って仰ってくださったので、ああっと思って……。一緒にここでお話してもらえませんか、ってお願いしたら「いいよ!」って。
ヤ:でも、まさか私たちのトークの前に、永井先生と藤子不二雄A先生があのようなエネルギッシュなトークをされるとは。
羽:たぶん私たちのほうが先だと思っていたので、2人で場を温めてお迎えしなければいけないと思っていたんですけれど……。
ヤ 私もそのつもりでいたので、ちょっと緊張してしまいますね。さっき、非常にエキサイティングなお話を聞かせていただいたので、今回は羽海野先生の『3月のライオン』という作品のテーマに合わせて……。
羽:レポーターさんみたいですね(笑)。
ヤ:私、レポーター業をずっとやっていたものですから、レポーター口調になってしまってすみません。羽海野さんをツイッターでフォローしている方は、受賞が決まってからの彼女の動揺っぷりをずっと追っていらっしゃったと思います。私は、授賞式には黒いドレスを着ていらっしゃるとお聞きしていたんですけれど、ちょっと様子が違いますね。どうしたんですか急に。
羽:これ、デザイナーの丸山敬太さん(注1)という方にオーダーメイドで作っていただいたんです。トークショーや人前でご挨拶することを想像したら不安になって、着ていく服がないし緊張するし、と夜中に切々とツイートしたんですね。そしたら敬太さんが、「良かったら僕、着ていく服の相談に乗りましょうか」って、ツイッター上で声をかけてくださいまして。ツイートでは、敬太さんが私のマンガをいつも読んでくださっているのを知っていたんですけれども。「ちょっとでもリラックスできて、痩せて見えるように作ってあげますから」って言ってくださって。作りたてのドレスがついさっき届きました。
ヤ:とても素敵ですよ。「ロミオとジュリエット」のジュリエットが着ていそうな、胸の下が切り替えになっている中世風のデザインですね。羽海野さんのイメージにぴったりのお召し物で感動しています。
羽:嬉しいです! 今日は“勇気の甲冑”を着てきました。
注1)ファッションブランド「KEITA MARUYAMA」デザイナー。手の込んだ繊細な刺繍など、乙女心に溢れたデザインで大人気。浜崎あゆみやドリカムなど、数多くのアーティストのステージ衣装も担当。