■お金がない=ダメ、ではない

ヤ:私が暮らしているイタリアっていう国には、当然いじめとかもあるんですよ。お前くさいなとか言われるんだけれど、そこまでみんな追い詰められない。っていうのは家に帰ると、「アモーレミオ(私のかわいい人)」って言ってくれる母親やおばあちゃんがいるんです。あんなふうに言われていると、生まれてきたことに対する疑問なんてみんな持たないし、自分自身ダメなのかもなんて誰も思っていないですよ。

羽:自分の存在を肯定してくれる人たちの中で過ごせるのはいいですね。ここに居ていいのかしらとかっていう疑問は……。

ヤ:ないですよ。だって怒られている時ですら、「アモーレミオ、ダメじゃない!」って言われますから。

羽:そうするとイタリアの男の人たちが、あんな感じに……。

ヤ:結婚するとああいう風になるんですかね。話がずれましたけれど、そういう愛情っていうのが、実は昭和の日本にもあったんじゃないでしょうか。イタリア人ほどの劇的な表現をしなくたって、愛情が子どもたちにきちんと伝わっていた。お金はないけれど幸せな日って、いっぱいあったじゃないですか。

羽:例えばアイスが買えなくても、私は製氷皿で作った氷にお砂糖をふりかけてみたり、缶詰のみかんを製氷皿に一つずつ入れたりしていました。

ヤ:自分で工夫してできましたよね。買えない物があったら、自分で画用紙切って作ったりしてませんでした? 私、スヌーピーのサンバイザーとか作ってましたもん。

羽:していました。お洋服を買ってもらえなくても自分で縫っていました。

ヤ:お金がないからダメっていう図式にはならなかったですよね。自分の欲望はいくらでも自分で満たせるっていう……。

羽:自分でやると、めんどくさいのとセットになっているけれど、できた時の嬉しさがすごくあります。

ヤ:そういうことを思い出してしまうのが『3月のライオン』でもあるんですよね。人生の喜びを謳歌しているのは、お金をやりくりして生活している3姉妹なんだなぁっていうことがすごく伝わってきます。

羽:友達がいて、家族がいて。家族が仲いいほうが楽しいですよね。その楽しさは人生の中で、今じゃなくても、先で見つけたっていいんだと思います。

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