1995年のオウム真理教による「地下鉄サリン事件」から25年──。社会はカルトへの警戒感を強めるが、今も水面下で活動を続けている。AERA2020年3月23日号では、主戦場を路上からSNSに移したカルトの勧誘手口を紹介する。
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「友だちに誕生日プレゼントを買ってあげたいんですけど、どれがおススメですか?」
関東地方に住む女子学生(19)はある日、都内のデパートのアクセサリー売り場で買い物をしていると突然、同年代の見知らぬ女性から声をかけられた。
誰、この子? 女子学生は怪訝に思いながら一緒に選んであげるとすっかり意気投合。すると、女性は「LINEを交換しましょう」と言ってきた。
LINEのアカウントを教えるのはよくあること。女子学生は気軽にアカウントを教えた。すると後日、LINEを通じ女性から「女子会」の誘いがあった。
楽しそうと思った女子学生は参加すると、年齢も近い人たちもいて話が盛り上がった。こうして何回か女子会に参加していたある日、女性が「私たちはある教典を学んでいるので一緒に勉強しないか」と言ってきた。
怪しいと思った女子学生は女子会に行くのをやめた。後に、その団体は「反社会性」が指摘されるカルトだと知ったという。
カルト──。公共秩序を破壊する反社会的な宗教組織だ。
1995年3月20日、カルト教団、オウム真理教による未曽有の地下鉄サリン事件が起きた。13人が死亡し6千人以上が負傷、今もその被害に苦しむ人は少なくない。事件後、社会はカルトへの警戒感を強めた。あれから25年、今、どうなったのか。
「今もカルトは水面下で活動している。特に新たな構成員の獲得として、若者への接近を模索する動きが続いています」
と警鐘を鳴らすのは、オウム真理教信者の脱会支援を目的に設立された「日本脱カルト協会」理事の岩野孝之さん(40)だ。
岩野さん自身、東京大学4年生の時、ある教団から勧誘された経験がある。インターネット上の情報によってそこがカルトであると分かり、しばらく身を置き実地調査をした後に脱会した。今は産業技術総合研究所(茨城県つくば市)で脳神経科学の研究員として働きながら、同協会でカルトの活動実態の調査などを行っている。