借りた人が改装し、何年か住んで退去した後も新しい借り手が入居する好循環となり、かつての空き部屋状態からは様変わり。家賃は当初の2万円から2万5千円、3万円へと上がっていった。

 ほかの物件では、5年ぐらい借り手がつかず、オーナーが数年後に取り壊す予定だった築32年の2階建ての一軒家というのがあった。DIY物件で貸し出したところ、デザイナーの女性が借り、改修に約100万円を投じたという。

 ここの家賃相場は月6万~7万円で、それを2万円で貸し出した。借り主は、好みに改装した部屋で、2年ほど相場の家賃で住んだとすれば改修費は回収可能となる計算だ。その後は格安家賃の2万円で住み続けられる。

 エスエストラストによると、賃貸物件の仲介を年間3500件ほど扱っており、DIY物件で契約が成立したのはこれまでに33件という。

 同社の広報担当の前田友香里さんはこう話す。

「通常のマンションなどのオーナーであればDIY型賃貸借にしませんかと誘っても、物件をどうされるかわからないため、いやと言われることが多い。不動産会社はオーナーの説得が必要で、大変です」

 日本の賃貸借では、借り手が退去時に原状回復義務を負うのが通常だ。飾り棚の取り付けで、壁に穴を開け、ビスや釘などを打つと、退去時の原状回復義務でトラブルになることも少なくないためだ。

 そうしたなかで、国は賃貸住宅の流通促進の一環としてDIY物件の普及に力を入れ始めた。

 原状回復義務などをめぐるトラブルに備え、ガイドラインも公表している。国土交通省の賃貸住宅対策の担当者は、DIY物件について、「空き家などを活用する一つの方式」としており、「原状回復義務があるなかで、いかにDIYを取り入れるか」をガイドラインで示している、と言う。

 空き家問題については、15年に空家等対策特別措置法が施行された。18年の総務省調査によると、全国の空き家は約849万戸で全住宅の7分の1。33年には2150万戸に達するとの予測もある。背景には高齢化問題がある。都会に住む人が田舎の実家を相続して扱いに困り、物件が賃貸借市場に出てくる、と国交省の担当者は予想する。

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