彼の著書『人がガンになるたった2つの条件』(講談社+α文庫)に詳しいのですが、細胞内でエネルギーを生み出す仕組みは二つあります。
一つは解糖系です。これは食べ物から得られる栄養素(糖質)をエネルギーに変換するシステムで、そのエネルギーの特徴は瞬発力。即効性はあるが量は少ないのです。
もう一つはミトコンドリア系です。食べ物の栄養素(糖質、脂質、蛋白質)に加えて酸素や日光なども利用するシステムで、そのエネルギーの特徴は持久力。即効性はないが作られるエネルギーの量は多いのです。
この二つは20歳から50歳代では1対1の比率で働いて調和しています。この頃が人生の最盛期です。60歳代からは、老年期を迎えると、ミトコンドリア系の働きが主体になっていきます。瞬発力ではなく持久力の世界に入っていくのです。
これを自律神経の面から見れば、瞬発力は交感神経(興奮)の働きであり、持久力は副交感神経(平静)の働きです。つまり、歳をとると興奮よりも平静が中心になっていくのです。これは「いい人」になっていくということですね。
しかし、人生のときめきという意味では、解糖系のふるまいも必要です。ミトコンドリア系ばかりに傾くのではなく、時には興奮してみる。つまり、いい人をやめる。これがナイス・エイジングの方法ではないでしょうか。
※週刊朝日 2020年3月27日号