鍵山は5歳のとき、スケートの指導者である父を見てスケートを始めた。

「親から勧められて始めたのではなく、スケート場に遊びに行っているうちに楽しくなったんです。当時は父のような選手になろうと思ったのではなくて、とにかく楽しかった」

 そんな鍵山に、トップアスリートとしての意欲を芽生えさせたのは、同年代のライバルたち。なかでも同学年の佐藤駿(16)とは、ジュニアに上がってから切磋琢磨する仲になった。

「駿君はとにかくジャンプがすごくて、自分とは実力が違うと思いました。最初は全然勝てなくて悔しかったです」

 それまでの鍵山は踊ることが大好きで、得意な技はスピン。しかしジュニアで4回転を跳ぶ佐藤らを見て、目標が変わった。

「年下や同学年の子が4回転を跳ぶなら、自分も負けていられないと思うようになりました」

 4回転トーループの練習を始めると、「思ったよりすぐに降りられるようになりました」。

それまで父のもとで基礎練習を徹底していたことが功を奏し、一気に得意技になった。

 ジュニアはショートでは4回転を入れられないことから、鍵山の勝負はフリーで4回転2本を入れる“挽回作戦”。1月のユース五輪はその作戦で、ショート3位から優勝をもぎとった。

 一方、世界ジュニア選手権は、首位発進からの銀メダル。

「この悔しさを一生忘れない」

 と誓った。来季からはシニア。

「夢は、五輪でメダル。その姿を父に見せたいです」

(ライター・野口美恵)

AERA 2020年3月23日号

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