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「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」
発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第13回の質問は「どうして悪いことをする人がいなくならないの?」です。
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【Q】どうして悪いことをする人がいなくならないの?
【A】悪いことだと思っていない人がいるからです。
最速の動物はなんでしょう。アフリカの草原にすむチーターですね。数秒で時速百キロまで加速して、ガゼルなどの獲物を見事に仕留めます。ところが、獲物を仕留めたことをハイエナに見つかると獲物を横取りされてしまいます。チーターは、足は速いのですが噛みつく力が弱く、ハイエナと戦うと負けてしまうので、横取りされるのもやむなしなのです。
このようなハイエナは“悪い動物”でしょうか。たしかに、人間から見たら、他者の成果を横取りするので、“悪い動物”に見えます。しかし、ハイエナは横取りを悪いこととは思っていないでしょう。自然界の厳しい競争の中で生きるために、横取りもひとつの生存手段なのです。
横取りをなくすためには、横取りをしなくとも普通に努力していれば生きていける環境をつくる必要があります。人類は、みなで協力し支え合うことによって、そうした横取りをしなくてすむ社会を築いてきました。
現代社会では、努力して得られた成果はその人のものであり、横取りはいけないこととしています。そうしておかないと、横取りばかりが起きて、新しい成果に挑戦する人がいなくなってしまいます。そこで、泥棒のように横取りばかりをしていれば、警察が取り締まることになるわけです。
では、悪いことをする人がいなくならないのは、警察がちゃんと取り締まってくれないからでしょうか。いえ、そんなに単純ではありません。明らかに悪いならば、取り締まりの対象なのですが、そうとも言えないことが社会にはたくさんあるのです。