日本傾聴能力開発協会・代表理事の岩松正史さん
日本傾聴能力開発協会・代表理事の岩松正史さん

 新型コロナウイルス感染の影響で、リモートワークを行っている企業も多いだろう。そんな今だからこそ、部下との付き合い方について振り返るいい機会ではないだろうか? 例えば以下のような悩み――。

「いろんなアドバイスをしているつもりなのに、全然部下が言ったとおりに動いてくれない」。そんな上司に必要なのは、「絶望する」スキルだという。その真意を、一般社団法人日本傾聴能力開発協会の代表理事・岩松正史氏による著書『その聴き方では、部下は動きません。』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・再構成して紹介する。

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 悩んでいる相手のモヤモヤしたネガティブな気持ちを深く理解する作業を、私は「絶望する」と呼んでいます。仰々しく聞こえるかもしれませんが、それくらい真剣に、話し手が感じている「悲しみ、苦しみ、迷い、戸惑い、落ち込み、八方ふさがり感」をあますことなく、全部感じとりにいきます。

 適切なアドバイスができない人は、ネガティブなものを避け、できるだけ早くポジティブにしようとするあまり、気持ちの問題を理解しないまま、経験と想像でアドバイスをしてしまいがちです。

 しかし多くの場合、その人の心理的要因が影響した結果として、そのような状態になっているわけです。ですから、ちゃんとネガティブなものを感じきり、相手が感じている「絶望」を共有して、何が前向きな行動や思考を阻害しているのかを知る必要があります。

■「イメージ絶望法」で聴く

「絶望」するための聴き方の基本が「イメージ絶望法」です。イメージ絶望法は、文字通り、頭のなかに思い描いたイメージを見ながら、「絶望」に近づいていく方法です。

 一般的に話を聴くとき、人は会話内の情報から想像し、情景をイメージしながら聴きます。イメージ絶望法でも、情景をイメージしながら聴きます。でも、イメージの仕方に特徴があります。

 まるで映画を見るように、話をしている相手の姿・表情・態度・しぐさをイメージし、その情景を見ながら、話を聴いてください。

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1つめのポイントとは?