「必ず、話し手の姿や表情をイメージのなかで見ながら聴く」。これが1つめのポイントです。

 たとえば、話しているのがAさんなら、Aさんが困っている、怒っている、落ち込んでいる、迷っている、混乱している、行き詰まっている……。そのときのAさんの表情や態度まで、しっかりイメージのなかで見ながら、話を聴きます。

 そうすることで、「Aさんは、たしかにそう思っている」「Aさんは、本当にそう感じている」「Aさんにとっては、この出来事にはこのような意味があると感じている」と、話をAさんのこととして聴くことができ、共感的な理解がしやすくなります。

■相手の立場で考えない

「絶望」するための聴き方の2つめのポイントは、「相手の立場で考えない」ことです。

 よく、相手の立場で考えましょう、といいます。でも私は、傾聴している最中に、相手の立場に立って考えることは一切しません。

 なぜなら、相手の立場に自分が立っているイメージを見てしまうと、自分が相手の立ち位置に立ってしまい、相手独自の個性が見えなくなってしまうからです。もし相手の立場に自分を置き換えてしまうと、その場面をイメージしたときに見えるのは、Aさんの姿ではなく自分の姿になってしまいます。

 それでは、「自分ならどうするだろうか」という視点になってしまいます。「相手を理解する」のではなく、「相手の状況に自分を置いて、自分ならどうするかを考える」ことになってしまいます。

「自分ならどうするか?」は、「同感」で、「共感」ではありません。

 イメージされた場面に実際に対応しなければいけないのは、Aさんという性格や個性を持った人ですから、Aさんのまま理解しないと、Aさんにとっての最良の解決策を見つけられないのです。

 話を聴くときに必要な視点は、あくまで「Aさんならどうだろうか?」という共感的な理解です。

「共感」とは、相手が感じている事実を100%認めることです。ところが、相手の立場で考えようとして、「あたかも自分がそこにいるかのように」考えてしまう場合があります。

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