年老いた時、性とどう向き合うか──。2月末に高齢者の性を描いた小説「春、死なん」を出した人気AV女優・紗倉まなさん(27)と、85歳となった今も多方面で精力的に活動するジャーナリスト・田原総一朗さんが、老人の性や恋愛などについて、たっぷりと語り合った。
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田原:「春、死なん」はとてもおもしろく読みました。紗倉さんがAV女優ということもあって、最初は年寄りの男のセックスの問題を描くのかと思ったら、そうではなかった。老いるとは何か、と。いろいろと考えさせられました。なぜ妻を亡くした70歳の男を主人公にしたの?
紗倉:私のAVを購入してくださった方が参加するイベントでは、3割ほどが高齢者の方々というのと、上の世代の男性に好まれていたアダルト雑誌が規制されて、デジタル化もさらに進んだら、高齢の方は性欲をどう処理していくのだろうか、というのがずっと気になっていたんです。
田原:実際にAVを見ている高齢男性と会って話すとどうですか。
紗倉:奥さんがいなくて、寂しくてイベントに立ち寄ったという人もいらっしゃれば、奥さんはいるけど、セックスをしていないから、AVはよく見るんだよね、と言ってくださる方もいらっしゃいます。
田原:去年、日本の高齢者の性について書いた『シルバーセックス論』という本を出したんだけれども、取材をしていると、女性は60代になるとセックスに興味がなくなるというケースが多かった。男性が取り残されるという問題があるね。
紗倉:小説の中で書きたかったことの一つが、高齢になっても性欲が枯渇することはないだろう、ということです。そして、それは嫌悪感を抱くことなのか、と。
田原:主人公の富雄は奥さんの喜美代を亡くした後、学生時代に一度関係を持った文江とたまたま再会し、ホテルに行くことになる。ベッドで抱き合おうとすると、文江の顔に喜美代の顔があぶりだされるという描写がありますね。
紗倉:富雄は、喜美代に一途であり続ける自分でありたいと思っていたけれど、それでは寂しさを深めるばかりだった。だから、文江とそういう関係になることで、自分を縛る理想像から解き放たれるんじゃないかと思ったんです。でも、そこで喜美代への依存を断ち切れていないということを実感するんです。彼にとって喜美代という存在の代わりなどいなくて、罪悪感を覚えてしまう。