西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、新型コロナウイルスによる球界の影響について語る。
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ここ2カ月くらい、このコラムでもずっと新型コロナウイルスと野球界について書いてきた。しかし、3月末から4月上旬に感染者はさらに増加傾向となっている。野球界では、阪神の藤浪、伊藤隼、長坂が感染者となった。大人数での会食を行ったことは大いに反省しなければならない。
4月3日のプロ野球12球団代表者会議では4月24日を目標にしていた開幕を延期することで一致。感染しない、させないということを前提に考えるのであれば、「開幕無期限延期」と「一時解散」方針を示してもいい時期に来たと個人的に思う。
利益を得なければ従業員に給料も払えない。それはどこの会社も一緒である。だから、一日でも早い開幕時期を探るという作業を否定すべきではない。毎週のように動向を注視しながら、無数のレギュラーシーズン日程を想定する。それ自体を無駄な作業といったら、いつまでたってもプロ野球は開幕できない。それは今まで何度も意見してきたことである。
だが、終息の兆しが見えない現状がある。さらに各自治体で「外出自粛」などの厳しい対応がとられるようになった。選手、スタッフにも戸惑いがあるだろう。ヤクルトは1軍が東京都内で、2軍は埼玉県に施設がある。ロッテも1軍が千葉で2軍が埼玉だ。そして埼玉を本拠地とする西武だって、都内に住んでいる選手が数多くいる。今は各都道府県で「外出自粛」が打ち出されており、練習場への移動もままならなくなっている。遠征を伴う試合どころではない。
各球団でも「公平性が担保できない」との声が大きくなってきた。大リーグでは早くからキャンプを中断し、開幕前にもう一度集合という措置をとった。日本は「遅い」という意見もあるだろうが、日本は一気に感染者が拡大したわけではない。「可能性が1%でもあるかぎり、開幕に向けて準備する」という考えで努力を重ねてきた球界が、次に決断をする時を迎えたということだ。