一体なぜ日本人選手は「メガクラブ」で輝けないのだろうか? タイトルを獲得し、自信を手にした選手がこぞって苦しむ理由はどこにあるのだろうか?

 もちろん、最初に選手のレベルは挙げられる。圧倒的な経済力を誇る彼らは、1選手獲得に平気で5000万ユーロ(約59億円)以上を投資する。そうして世界各国から集められた選手は、サッカー界を代表するようなネームばかり。どんな選手でも難しい。また、彼らは現在のチーム強化を最優先とする。サポーターもすぐに結果を期待する。時間的な猶予はほとんどない。

 そして、前述の海外で評価される日本人選手の特徴が、「メガクラブ」への挑戦を難しくしているとも言えるだろう。

 レアル・マドリーに象徴されるように、彼らは各ポジションに圧倒的な個性を持つ選手を揃える。チャンピオンズリーグ三連覇を達成した当時のマドリーを見てみれば、中心はクリスティアーノ・ロナウドやギャレス・ベイル、セルヒオ・ラモスらとにかく“我が強い”選手が担っていた。もちろん献身性や指示を守ることは基本だ。だがこれらのクラブでは、その上で“エゴ”を出さなければならない。目に見える結果を残さなければならない。世界中を魅了しなければならない。さもなければ、ファンや経営陣からも重要な選手とはみなされないし、簡単に挿げ替えられてしまう。

 また「メガクラブ」が故のマネジメントも障壁の1つ。彼らが華のある選手ばかりを揃えるのは、コマーシャル面への期待も大きい。世界的に人気ある選手のグッズ販売や広告費で移籍金以上の莫大な収入を確保できる。“派手な移籍”を毎年のように行うのはそのためだ。

 そうして集まった個性豊かな選手をいかにまとめるかが、指揮官に問われてくる。クラブの意向に沿った補強を基にしてチームを作る。大げさに言ってしまえば「ビッグネームを連れてくるからあとはよろしく」なのだ。それゆえ、「チームをうまく回す」際に力を発揮する日本人選手はなかなか候補とならなった。その他、EURO圏外であること、言語の問題、文化の違いなどなど……。様々な理由で世界最高峰への挑戦は阻まれてきた。

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潮目は変わりつつある?