近年、日本人選手の海外挑戦が相次いでいる。昨夏にはレアル・マドリーへ加入した久保建英(現在はマジョルカへレンタル移籍中)をはじめ、多くの若きサムライが海を渡った。
移籍市場での選手価値が急激に高騰する昨今において、比較的安価で獲得できることも大きな要因の1つだ。中小クラブは安い金額で若手を獲得し、育て上げて高額で売却するというスキームを確立。世界中で優秀な人材の発掘に精を出しているが、日本はその条件にぴったりと当てはまる。だが、それだけが理由ではない。
南野拓実を例にとってみよう。2015年、当時19歳でザルツブルクへ移籍。欧州でのキャリアをスタートさせたが、その当時クラブのSD(スポーツ・ディレクター)を務め、獲得を主導したラルフ・ラングニック氏は以下のように語っている。
「ボール扱いが見事で、テクニックがあり、素晴らしいメンタリティを持っている。そして多くの日本人選手と同じように、ボールを奪い返すためにチームへ喜んで貢献する」
高い技術、ハードワークを厭わず、規律や指揮官の指示を忠実に守り、チームへの献身を最優先にする……。指導した監督たちはほぼ間違いなく口にする。
「指示を忠実に守る」日本人の国民性をそのまま表したような言葉だが、これこそ海外で評価される理由だ。ますます戦術的な戦いが求められる現代で、監督の指示を忠実に実行し、チームのために走り回れる選手は欠かせない。欧州や南米出身選手がやや独断でプレーする傾向があるのに対し、指示に忠実な日本人選手の需要は少なからずある。
こうした長所をもって、 香川真司はドルトムントで2連覇を達成。岡崎慎司は歴史的なプレミアリーグ制覇を成し遂げた“ミラクル・レスター”の一員となり、過去を振り返れば中田英寿(ローマ)など、主要リーグでタイトルを掲げた選手も多い。
だが、いわゆる「メガクラブ」となると話は変わる。ドルトムントでの成功を経てマンチェスター・ユナイテッドへと加わった香川は、不完全燃焼のまま2シーズンで退団。大きな期待を受けて1月にリヴァプールへ加わった南野も、貢献できていると言い難い(判断するのは時期尚早だが)。バルセロナとレアル・マドリーのリーガ二大巨頭で公式戦に出場した選手も未だいない。